労基法上と安衛法上の労働時間把握の違いって何?

こんにちは、三ツ星HRコンサルオフィスです。

直近で立て続けにご相談が増えているのですが、「労働時間」についです。

労働時間に関して理解をするには、労働基準法と労働安全衛生法を押さえないといけません。

そこで当記事では、労基法上と安衛法上の労働時間把握の相違についてまとめました。

この考え方は、必ず押さえておく必要があります。

労基法による労働時間の把握

労働基準法(以下、労基法)には労働時間の把握義務についての規定がありません。

しかし、労基法には労働時間、休日、深夜業などについて規定を設けられていることから、使用者は労働時間を適切に管理する義務があります。

そこで、平成13年から労働時間の適正把握に関して通達による行政指導が行われてきましたが、平成29年に「過労死ゼロ」緊急対策の一環としてこの通達が改正されて、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(以下、ガイドライン)により、以下のとおり始業・就業時刻の把握を客観的な方法で行うように指導が行われています。

なお、このガイドラインは、労基法41条に定める者およびみなし労働時間制が適用される労働者には適用されません

安衛法による労働時間の状況の把握義務

平成30年に労働安全衛生法(以下、安衛法)が改正され、労働時間の状況の把握義務が規定されました。

それによりますと、事業者は、同法66条の8第1項(長時間労働者)または同法66条の8の2第1項(研究開発業務従事者)の規定による面接指導を実施するため、タイムカードによる記録、パソコン等の電子計算機の使用時間(ログインからログアウトまでの時間)の記録等の客観的な方法その他の適切な方法により、労働者(高度プロフェッショナル制度の適用対象者を除く)の労働時間の状況を把握しなければならないことになりました(同法66条の8の3、労働安全衛生規則(以下、安衛則)52条の7の3)。

労働時間の状況の把握は、労働者の健康確保措置を適切に実施するためのもので、その対象となる労働者は、高度プロフェッショナル制度の適用者を除き、

①研究開発業務従事者

②事業場外労働のみなし労働時間制の適用者

③裁量労働性の適用者

④管理監督者等

⑤派遣労働者

⑥短時間労働者

⑦有期契約労働者

を含めたすべての労働者です。

労働時間の状況の把握とその方法

安衛法が把握を求める労働時間の状況とは、労働者の健康確保措置を適切に実施するために、労働者がいかなる時間帯にどの程度の時間、労務を提供し得る状態にあったかであって、具体的には労働者の労働日ごとの出退勤時刻や入退室時刻の記録等を把握しなければなりません

管理監督者等、事業場外労働のみなし労働時間制の適用者および裁量労働制の適用者を除く者の労働時間の状況の把握は、賃金台帳に記入した労働時間数をもって、それに代えることができます。

労働時間の状況の把握方法は、タイムカード、パソコン等の電子計算機の使用時間(ログインからログアウトまでの時間)の記録、事業者あるいは事業者から労働時間の状況を管理する権限を委譲された者による現認等客観的な方法その他の適切な方法とされています(安衛則52条の7の3)。

その他適切な方法としては、やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合において、一定の措置を行った上での労働者の自己申告による把握が考えられるとさています。

「「やむを得ず客観的な方法におり把握し難い場合」には、例えば、労働者が事業場外において行う業務に直行または直帰する場合など、事業者の現認を含めて、労働時間の状況を客観的に把握する手段がない場合があって、この場合に該当するかは、当該労働者の働き方の実態や法の趣旨を踏まえ、適切な方法を個別に判断すること」とされています。

労基法の労働時間と安衛法の労働時間の把握の相違

労基法の労働時間の把握と安衛法の労働時間の状況の把握には、下の図のような違いがありますので、ご注意が必要です!

 

労基法(ガイドラインによる行政指導) 安衛法(66条の8の3による義務)
目的 労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に把握するため 労働者の健康確保措置を適切に実施するため
把握する労働時間の考え方の相違 労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいう 健康確保措置を適切に実施するために、労働者がいかなる時間帯にどの程度の時間、労務を提供し得る状態にあったか
把握対象者 労基法41条に定める者およびみなし労働時間制が適用される労働者を除く労働者 高度プロフェッショナル制度の適用対象者を除くすべての労働者