そもそも、勤怠の打刻はどこで行うべきか

こんにちは、三ツ星HRコンサルオフィスです。

春先から最近まで、ご相談の主といえば、コロナ関連の助成金でしたが、最近は労働時間関係のご相談もあらためて増えています。

タイムレコーダーなどをどこに設置し、打刻するのがよいのか、永遠のテーマでもあります。

例えば工場では、「工場の出入口」・「更衣室」・「作業場の出入口」のいずれに設置し、いつの時点で打刻させるのが適当なのでしょうか。

IPO関連のご相談の際にも、必ず議論がなされることです。

結論、行為等の準備作業に要する時間が使用者の指揮命令下に置かれている場合は更衣室、任意の場合は作業場の入り口に設置するのが妥当なところでしょう。

色々と議論されるところですが、当記事では、労働時間の概念か労働時間の管理に関する判例などを交えて、ざっくりとまとめました。

人事労務担当者の方は、必ず抑えておきたい内容ですので、参考にしていただければ幸いです。

労働時間の概念

労働時間とは、一般的に休憩時間を除き、「労働者が使用者の指揮命令に服し、労務を提供している時間」をいいます。

この「労務を提供している時間」とは、現実に業務を行っている時間のみを指すものではなく、使用者の指揮命令下にあり、いつでも作業ができるように待機している時間(いわゆる手待時間)を含むものとされています。

逆に、使用者の指揮命令下になく、労働から完全に解放されている休憩時間などは労働時間とはなりません。

判例では

※三菱重工業長崎造船所事件
「労働基準法32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当する否は、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である」
とし、労働者が使用者の指揮命令下に置かれているか否かで定まるものとしています。

作業着への更衣の時間についての考え方

作業場への更衣に要する時間について、前掲「三菱重工業長崎造船所事件」では

「労働者が、就業を命じられた業務の準備更衣等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくなれたときは、当該行為を所定労働時間外において行うものとされている場合であっても、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、当該行為に要した時間は、それが社会通念上必要と認められるものである限り、労働基準法上の労働時間に該当すると解される」
準備行為等にかかる時間を労働時間としています。
これまでの判例では、日野自動車工業事件のように、着替え履替えの所要時間が使用者の明治または黙示の指示によってなされるものであるとしても、職場における従業員の安全確保のためにとった使用者の便器的措置であることを考慮すれば、その時間は労働時間に含まれないとしたものもあります。
しかし、「三菱重工業長崎造船所事件」の最高裁判決は、実作業に付帯する準備行為の時間について、使用者の指揮命令下に置かれていると「社会通念」により認められる限り、労基法上の「労働時間」に当たることを確認し、従来、学説、判例上争いのあった問題について解釈を統一しました。
これを基に準備行為が労働時間に該当するのか否かを考えた場合、
  1. 準備行為が業務命令として労働者に義務付けられている行為であるのか
  2. あるいは労働者の自由裁量による任意の行為とされているのか

によって区別され、①の場合は、労働時間に当たることになります。

入門から職場まので歩行に要する時間についての考え方

前掲「三菱重工業長崎造船所事件」では、午前の始業時刻前に所定の入退場門から事業所内に入って更衣所等まで移動する時間、午後の終業時刻後に更衣所等から入退場門まで移動して事業所外に退出するまでの時間については、「指揮命令下に置かれたものと評価することができないから、(中略)移動に要した時間は、いずれも労働基準法上の労働時間に該当しない」と判断しています。

一方、同判例は、労働者が使用者から実作業に当たり作業服および保護具等の装着を義務づけられ、この装着を所定の更衣所等で行うものとされている場合、この装着および更衣所等から作業場までの移動は、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるとし、労基法上の労働時間に該当するとしています。

まとめ

工場勤務者などの「着替え」が作業や業務にとって必要不可欠な時間であり、かつ、使用者の指揮命令下おいて行われるものであれば労働時間として考えなければならず、労働者の自由任意に行うものであれば労働時間ではないと解することができるのではないでしょうか。

また、会社の入り口から更衣室までの移動時間については、労働時間に該当しないといますが、作業着への着替えが使用者により義務付けられ、この着替えを所定の更衣室で行うものとされている場合は、更衣室から作業場までの移動時間については、労働時間にあたるといえるでしょう。

冒頭ありましたとおり、どこからが労働時間かは永遠のテーマでありますが、実態に合わせて労働時間をカウントされるようにされてください。